リストマーク 駒沢給水所配水塔(2004年01月)

写真1.駒沢給水所配水塔全景


 始めにお断りしておくが、駒沢給水所配水塔は「廃墟」では無く現役の施設である。しかし、その佇まいがいかにも「廃墟系」であるため、ここに取り上げてみた。とにかく、東京都世田谷区の住宅密集地のど真ん中に、このような巨大かつ古風な建造物が残っているというのは驚きだ。施設自体は水道局の厳重な管理下に置かれ、敷地内部に無断で入ることができないが、周囲からもその異様な姿を眺めることができる。

 駒沢給水所は、東急田園都市線「桜新町」駅から徒歩5分程度の場所にある。住所で言えば東京都世田谷区弦巻にあたる。この給水所は大正13年(1924年)に竣工したそうだ。多摩川の水を渋谷の町に送るための施設で、町営水道設備だったというわけである。構内には浄水場、ポンプ場、配水設備、水道管等が設けられていた。給水塔は南北に2本建っており、その間を鉄製トラスで組まれた連絡橋が渡る。給水塔の高さは30m、内径は最大で18m、1基当たりの貯水容量は2,775立方メートルだそうだ。ここに蓄積された水は、自然流下により渋谷町まで送水されていた。なお、現在でも世田谷区の一部地域に送水を行っている現役施設である。

 給水塔は2本ともギリシャ風のレトロな装飾が施されている。円筒形の建物の周囲には12本の付け柱が設置され、屋上には避雷針を設けたドームを中心に、周囲に12個の紫色の照明灯を配置するという凝った造り。北側の塔の側面には「滾々不盡(こんこんとしてつきず)」、南側の塔側面には「清冽如鑑(せいれつかがみのごとし)」の刻印が施される。設計は近代水道建築の祖、中島鋭治博士となっている。

 構内南側正面入り口からは、昭和8年に建設されたという第一ポンプ室が見える。この建築もシンメトリックで堂々としたもので、とてもただのポンプ室とは見えない。周囲が住宅密集地であるため、給水所の各施設は、なかなか全体を見ることは難しいが、部分的に見ても十分その威圧感が伝わってくる。施設の性格上、一般公開は難しいのかもしれないが、是非期間限定でも良いから、内部を公開してもらいたいものである。

【参考文献:男の隠れ家(2003年6月号刊)】

Google Maps上での位置は、下記の通り。
駒沢給水所配水塔

写真2.駒沢給水所正面入り口
敷地の南西側に位置する正面入り口。南北に並ぶ給水塔のうち、南側の塔が正面に見える。塔の右側に見える建物は、昭和8年建造の第一ポンプ室。構内は当然のことながら立ち入り禁止区域となっている。


写真3.駒沢給水所構内
給水所構内を広角レンズで撮影。南側給水塔と、その右側に第一ポンプ室が見える。構内は大変良く整備されている。広角レンズで広大な空間のように見えているが、実際はこれほど広くは無い。


写真4.駒沢給水所側面入り口
構内西側に設けられた側面入り口。正面に見えるのは、南側の給水塔。


写真5.駒沢給水所配水塔上部構造
給水所近傍にあるマンションの3階より撮影した、北側給水塔のアップ。南北給水塔を結ぶ連絡橋が見える。給水塔の最上部には、円形に12個の紫色の照明灯が備わる。連絡橋上には4個の照明灯が設置されている。


写真6.駒沢給水所配水塔上部アップ
ローマ風建築を思わせる付け柱を持つ給水塔の側面。柱は周囲に12本あり、ラーメン模様の装飾が上部に施される。凝った造りだ。給水塔上部には避雷針を設置したドームがある。


写真7.配水塔側面の飾り模様
付け柱上部に施された装飾模様。実に意味深な模様である。一見ラーメン模様のようにも見える。模様中央の10本の縦棒も、何か意味があるのかもしれない。


写真8.配水塔上部ドームと照明灯のアップ
12個ある紫色の照明灯は、改修工事の際に復元されたもの。


写真9.2本の配水塔の全景
南北給水塔の全景。構内が狭く、また住宅密集地域でもあるため、このように全体を見渡す写真を撮影するのには骨が折れる。このショットは、隣接するアパートの3階廊下から撮影したもの。広角レンズを用いているので、若干広く写っている。住宅地の中にこのような建造物があるのは、かなり異様な風景だ。


写真10.配水塔全景
給水塔の構造は、基壇、中間層、上層の三層に分かれている。


写真11.北側配水塔側面の刻印文字
北側給水塔の側面には、「滾々不盡(こんこんとしてつきず)」の銘板が刻印されている。南側給水塔には「清冽如鑑(せいれつかがみのごとし)」の刻印が施されているはずであるが、構内に入らないと確認することができない。


写真12.構内にあった煉瓦造りの小屋
構内北東隅には、煉瓦造りの小さな小屋が残っていた。荒れ具合から見ると、現在では使用されていないようにも思える。


写真13.立ち入り禁止の看板
給水所という施設の性格から、構内は立ち入り禁止。かなり厳しい監視体制を敷いているのが立て看板からわかる。曰く、進入感知センサやインターネットTVカメラを備えており、不法侵入者は和田堀給水所に通報され、然るべき法的処置が施されるとのこと。まあ、当然であろう。


写真14.水道用地としての道路から見た給水塔
給水塔までは、まるで神社の参道のような細長い道が続いている。看板によれば、この道路は水道用地となっており、駐車等を行うことはできない。思うに、この道路の地下に、水道管が敷設されているものと思われる。桜新町駅の近くから給水所に至るまで、かなり長い水道道路が通っている。


写真15.2つの給水塔を結ぶ鉄骨トラス
南側の給水塔と連絡橋をアップで撮影。給水塔の頂上ドームへ登るハシゴも見える。




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