コダックのデジカメ史上、最高傑作と言い切れる製品、DC4800。発売は2000年06月。価格は驚きの99,800円。310万画素。当時としてはトップクラスの性能を有していた。

■DC4800 (2014/03/07)

 コダックのデジカメ、DC4800については、いつか書こう書こうと思っていて、なかなか実現しなかった。本日、ようやく押し入れの奥底から半日かけて発掘してきたので、今回はこのデジカメについて述べてみたい。

 とにかくもう、このデジカメにはお世話になった。筆者がDC4800を購入したのは、発売後1年ほど経過した、2001年の02月のことだった。DC4800は、2000年に発売されたのだが、価格が99,800円と途方も無く高く、当時の筆者にとっては高嶺の花でとても入手できなかった。しかし、その性能は各種メディアで絶讃されており、メインのカメラとして是非とも使ってみたかったのである。

 とはいえ、とても新品では買えない。従って例の如く、オークションで手頃な価格の良品が出るのを待っていた。ようやく落札した製品はほぼ新品同様で、機能面では全く問題が無かった。落札時の価格は、正価の半分程度だったが、それでも4万円を超え、決して安い買い物ではなかったことを覚えている。

 それから、DC4800との生活が始まった。それこそ、どこへ行くにも、このデジカメと一緒だった。デジカメの製品寿命は大変短いが、このカメラは長期に渡り使用した。このデジカメを購入した当時、筆者は廃墟系のコンテンツ撮影を積極的に行っていた。幸い、廃墟系に掲載した写真の多くは、このカメラで撮影したものだ。310万画素というスペックは今となっては貧弱だが、画質は下手な高級機をはるかに凌ぐ実力があった。特に、コダックブルーと呼ばれる、抜けるように青い空の色は、一度ハマってしまうと逃れられまい魅力がある。今はもう残っていない廃墟群を、このカメラに納めることができたのは、ラッキーだったと言えよう。

 絵作り以外にも優れた所があった。バツグンの操作性である。絞り優先のダイヤルは、銀塩カメラのメカそのもので、とても使いやすい。筆者は絞り優先を好んで使うタイプなので、このダイヤルは重宝した。露出補正も、昔ながらのレバースイッチだ。ロシアカメラの鬼のようなメカニカルに慣れ親しんだ筆者としては、このような物理ダイアル、物理レバー搭載のデジカメが一番使いやすい。

 もちろん、至らない部分もある。背面の液晶ディスプレイなど、追従性は悪いし表示画素も粗くて見づらい。電源ONからの起動時間が長い、バッテリの持ちが今の水準からすると言語道断レベルに短い、SDカードへのデータ書き込みが遅い、などなど・・・。でもね、これらの欠点を補って余り有る絵が撮れるのだよ。

 このカメラは徹底的に使い潰した。今見ると、本体はキズだらけだ。カメラのキズは勲章だよ。しかし、中身はしっかりと作られており、10年以上の歳月を経た今日、何事も無かったように起動した。それもそのハズである。中身はチノンのOEMだ。Made in Japanなのである。品質的には、日本の規準なのだよ。

 このデジカメと出逢ってしまってから、筆者は他メーカーのデジカメには興味が無くなった。その後、どんどん画素数が上がって行き、高機能のモデルが出てきたが、DC4800はなかなか手放せなかったのである。多少大袈裟な表現になるが、個人的には今でもデジカメ界屈指の傑作だと思っている。


DC4800本体と付属品。バッテリーはFUJI-FILMのNP-80が使用できる。左下の専用充電器は、DC4800とは別個に購入したもの。

DC4800本体正面。フラッシュは本体上部からポップアップする仕組みになっている。使用レンズは、Kodak EKTANAR Lens F2.8-4.5 28mm-84mm(35mm換算)。2000年当時のデジカメは、ほとんど35mm換算で35mmのものだったので、広角寄りのDC4800は珍しかった。

DC4800本体背面。液晶画面は、1.8インチの低温ポリシリコンTFT液晶。現代のデジカメとは比較にならないくらいお粗末な画質であり、追従性も悪い。当時としては、これが精一杯だったのだろう。なお、バッテリー残量が少なくなると、節電のため自動的に液晶モニタ画面が消える。この場合には、光学ファインダーを使っての撮影となる。

DC4800本体軍艦部。軍艦部とはいっても、フルマニュアルの銀塩メカフィルムと比較すればあっさりしている。露出補正用レバー、露出設定用ダイアルなど、DC4800ならではの操作性が詰まっている。電源は、露出設定用ダイヤルの中心部にあるスイッチを長押しする。

これば、DC4800のキモである。±2まで、0.5刻みで設定できる露出補正レバー。F8〜F2.8まで、3段階に設定できる絞り。この操作に慣れてしまうと、今のコンデジのように、メニューが面を出してカーソルで設定するなんてことは、バカバカしくてやってらんなくなるよ。

メモリはコンパクトフラッシュを横から挿入する。発売当時はメモリも高価だったので、どんなにキバっても256MB程度の容量しか購入できなかった。なお、書き込み速度は、かなり遅い。従って、撮影中にちょっと待たされる感じがする。

バッテリーは、NP-80が使用できる。Kodak純正は高価だったので、筆者はもっぱらFUJI-FILMのNP-80を使用した。3.7V、1,300mAhの容量を持つリチウムイオンバッテリーである。単三乾電池と比較して軽量なのは良いのだが、この時代のデジカメは結構電力を使うので、無くなるのも早かった。撮影時には常時フル充電したバッテリを3本は持ち歩いていた。DC4800のバッテリーは、単三乾電池のようにどこでも購入できない。この点だけは不便である。

DC4800の銘板。本体は日本のチノンがOEM供給していたことは有名。Made in Japanである!但し、画像処理エンジンのファームは、Kodakオリジナルのものだ。

DC4800の撮影例。余りにも沢山の画像を撮影したため、サンプルを何にするか迷ったが、結局この画像に落ち着いた。廃墟系にも掲載した「根岸競馬場一等観覧席跡」正面である。2003年04月07日、16:32の撮影。f8。1/180秒。
拡大(2160×1440ピクセル)


 DC4800には、大変強力な周辺装置があった。それが「ワイドコンバージョンレンズ」である。KODAK EKTANAR ワイドコンバージョンレンズ(WCL-4800)は、焦点距離を0.6倍に拡大するという、魚眼に近いレンズだ。DC4800は、当時としては珍しく、ワイド側は28mmの設定なので、これにコンバージョンレンズを付けると

 28mm × 0.6 = 16.8mm

 という、超広角を得ることができる。これは、室内での撮影に役に立つが、通常の風景を撮った場合でも、非日常的な画角となり、面白い演出ができた。このレンズの正価は、確か9,800円だったように記憶している。ワイドコンバージョンレンズを付けたDC4800は、なかなか迫力がある。持ち運びには苦労したが、これで狭い廃墟の中をバシバシと撮影した。

 DC4800 + WCL-4800の組み合わせ画像は多数あるが、ここではそんな中から、屋外と屋内の2枚をサンプルとして貼っておく。


DC4800に、純正のワイドコンバージョンレンズであるWCL-4800を装着させたところ。レンズ口径が大きいので、一気に迫力が出る。

DC4800 + WCL-4800の上部画像。ここまで大きくなると、さすがに持ち運びに苦労した。

KODAK EKTANAR ワイドコンバージョンレンズ(WCL-4800)。焦点距離が0.6倍になる。

DC4800 + WCL-4800の撮影例。2002年02月24日、11:15撮影の都庁。f8。1/250秒。
拡大(2160×1440ピクセル)

DC4800 + WCL-4800の撮影例。2001年09月16日、15:52撮影。筆者がその昔やっていたアンティーク・ショップ「FunkyGoods Shop」の室内を撮影したもの。f8。1/3秒。三脚を使った長時間露出を行った。実際の店舗内はかなり狭いが、16.8mmの広角のおかげで、広く見える。
拡大(2160×1440ピクセル)

10年振りにバッテリーを充電して起動させてみた。機能面では全く問題は無さそうである。ただ、長期に渡る保存のため、ズーム動作時の鏡胴の動きが、若干ぎこちなかったが、数十回出し入れをしていたら馴染んできた。

背面の液晶画面。これはショボい。仕方無いけどね。




<< Menu Page



Copyright (C) Studio Pooh & Catty
1996-2014