「重力の再発見」(早川書房刊:2009年11月初版)


■重力の再発見 (2010/05/11)

 文句無しの良書!最近読んだ本の中では、ダントツに面白い。まず360ページ以上の本の要約を、たった10ページの「はしがき」で完璧に描き上げた筆力は驚嘆に値する。本文もキレが良く、どんどん引き込まれる。現代宇宙論に興味のある方であれば、まず面白いと感じるだろう。もし購入するのが不安であれば、この「はしがき」だけを立ち読みして決めて頂ければよい。価格2,400円は、コストパフォーマンス最高だと思う。

 この本も新聞の書評に掲載されたものだ。内容としては、アインシュタインの一般相対性理論って、間違っているとまでは言わないまでも、まだ修正する余地があんじゃねぇ?というものだ。ブラックホールのような星の存在やビッグバンといった特異点、さらには物質の96%を占めるというダークマターやダークエネルギーといった怪しげなモノの存在が無いとうまく説明が付かない現代の宇宙論を、別の解釈で理解しようという試みである。

 光速やニュートンの重力定数は可変する、といった結構ぶっとんだ内容の理論であるが、極めて理路整然としており、似非科学とは全く異なる。何よりも、この本の著者は自分の理論(MOG:修正重力理論)を絶対視していない。あくまで考え方の一つであり、なおかつ一番効率良く説明できるものであり、そして観測による証明が可能なものだということで生涯をかけて研究しているという、謙虚な態度が良い。アインシュタイン至上主義の保守的な物理学者も必要だが、もう少しアタマを軟らかくすれば、変な物質やらモノを導入しなくても済むのではないか?という、きわめて真っ当な解釈である。

 他人と同じことを考えるのが嫌なヒト、へそまがりなヒト、自分は天の邪鬼だと思うヒトには最適の一冊と言えよう。既出「迷走する物理学」「ストリング理論は科学か」に通じる痛快な読後感を味わえる。

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