謎のVL-SCSIカード、S1392。1993年33週(1993年10月)頃の製品である。基板は中国製。50PinのナローSCSI I/Fと、FDD I/Fが搭載されている。基板上には、Adaptec社製AIC-6360が搭載されている。SCSI IRQ、I/O Address等は全て基板上のジャンパピンにて手動で設定する。
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■退廃的互換機趣味(其之二十三) (2009/06/20)
 【SCSI】

 ここまで来ると、このコーナーはもはやシュヴァルツシルド・カフェでは無いな。いっそのこと「退廃的互換機趣味」のコーナーに改名しようか、とも考えている。毎回毎回、一体誰が読むのかワカラン記事ばかり掲載しては、悦に入っているから困ったモンだ。今回もまたクソの役にも立たない記事である。

 最近、ソフト系の話題が多かったので、ここらでハードウエア系の話題を取り上げることにしよう。一般民生用PCからは、その存在が抹消されてしまった「SCSI」である。DOS/V黎明期もしくはPC98帝國の黄金時代には、SCSIは無くてはならないI/Fであった。互換機では特にアダプテック社のISA版SCSI、AHA-1542が超有名であった。筆者も386BSD時代から同ボードを愛用してきたものである。

 今回はこれに加えて、謎のVL-SCSIボードを取り上げよう。また「謎」なのだが、実際このボード、ホントに謎なんだから仕方ない。1993年10月に中国で製造されたS1392という型番のこのボード、ナローSCSIとFDD I/Fが搭載されており、IRQやBIOS Address等は全てジャンパで手動設定という、かなりキワモノ臭い。

 さて、SCSI I/Fを使うのであれば、SCSI HDDも用意しなくてはならん。そんな中、丁度良いものがあった。NECが1990年12月に製造した110MB程度のSCSI HDDである。これは古い。マジで古い。しかも一応3.5インチなのだが、厚さが一般的なタイプの1.5倍程度ある。今回は2009年時点で約19年前のSCSI HDを蘇らせてみよう。

SCSI I/Fといえばコレ。アダプテック社製AHA-1542である。ナローSCSIに加えFDD I/Fも搭載していた。バスはISA。その安定性は群を抜いていた。充実したソフトウエアも同梱されており、当時のブランド品であった。
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今回テストに使用したSCSI HDDは、NEC社製D3861(左側)。右はシーゲートのST3600N(500MB)で比較のために置いたもの。D3861のレトロな外観が郷愁を誘う。。。
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NECのD3861(左側)とシーゲートのST3600N(右側)の裏面。ST3600Nにはドライブに着脱可能なターミネーターが付いている。一方、D3861はDIPスイッチでターミネーターのON/OFFを行う仕様となっている。
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NEC製D3861(左)とシーゲート製ST3600N(右)との厚さの差。これだけの違いがある。
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NEC製D3861の表面。1990年12月の製造と、極めて古い。発掘してきた際は、まだ動くかどうか不安であった。
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NEC製D3861の裏面。それはもう、びっくりするくらい実装部品点数が多い。見慣れた8ビットマイコン、μPD78C10(87AD)の姿も見える。懐かしいなぁ。昔、A/Dコンバータ内蔵のこのシングルチップマイコンを良く使ったモンだよ。。。
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 先ず最初に、本連載第一回目「謎のマザーボード発掘の巻(2008/09/15)」で紹介したVL+ISA+PCIなんでも有りのマザーボード、PC CHIPS社製M915に、VL-SCSI S1392を取り付けてみた。ところが、HDDは認識するものの、その後の挙動が不審だ。出た!これがいわゆる「ボードとの相性問題」というヤツである。もうこうなったら救いようが無い。手っ取り早いのは、マザーボードを変えることである。と言うわけで、本連載初のマザーボード交換となった。

 ピンチヒッターとして登場したマザーボードは、これも本連載第一回目に紹介した、謎(また謎かよ!)のVLバス3本のもの。おそらくは台湾「ALI」社のものと思われるが、詳細は不明。製造は1994年04週頃。CPUに80486DX2(66MHz)を搭載しているのがちょっと気にくわないが、まあガマンしよう。なぜ気にくわないかと言えば、このマザーボードは30Pin SIMM 8本を搭載する、メモリ8MBのボードなんだよね。たかが8MBに66MHzのCPUとは、不釣り合いである。バランス感覚が無い!でも、この際仕方無い。

 このボードとは相性は良かったようで、何事も無く認識し、フォーマットした後、DOSを導入することができた。スピードもそこそこである。1990年12月製造の古代のHDDも、ちゃんど不良セクタ無しで生きていたから、大したものである。「dir」コマンドを打った際、最後にディスク総容量が表示されるまでに、SCSI特有のちょっとした間もあり、こういったところで「ああ、SCSIだなぁ・・・」と愛でるのである。

 ところで、今回驚いたのは、一般民生用PCからは、ホントウにSCSIは忘れ去られてしまったようだ、ということだ。データセンターではまだ現役で使用されているものの、一般人がお目にかかることは滅多に無い。まあ、現代のPCでは、周辺機器接続はUSBが全盛期だからしょうがないにしても、SCSI用のメンテ部品も無くなってしまっている。50PinのナローSCSI内蔵用ケーブルを探してみたのだが、秋葉原のかなりコアなお店に行っても、もはやどこにも置いていない。WideSCSIのケーブルであれば、まだ残ってはいるのだが、ナローは絶滅に近い。某オクでやっと探すことができる程度である。何の変哲も無い、ただの50ピンのフラットケーブルなんだけどねぇ。。。

相性問題を回避するため、急遽変更となったマザーボード。1994年初頭に製造されたこのボードは、VLバスが3本付いている。メモリが30PinのSIMMなのがショボい。でもCPUは80486DX/2(66MHz)と、頭でっかちな仕様である。
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ボードにHDDを接続したところ。この写真では、謎のVL SCSIでは無く、アダプテック社製AHA-1542を用いて接続している。
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AHA-1542を使いマシンをブートさせたところ。NEC製D3861をCドライブとして認識し、SCSI BIOSが組み込まれた。

AHA-1542では、ブート時に「Ctrl」+「A」キーを押すことで、BIOSの設定画面に入ることができる。これも当時使っていた方には懐かしい画面であろう。最初の画面は、ホストアダプタのポートアドレスの設定であった。

AHA-1542でのBIOS設定画面その2。BIOS設定メニューが表示される。

AHA-1542でのBIOS設定画面その3。SCSIのコンフィギュレーション設定画面。

AHA-1542でのBIOS設定画面その4。接続されているSCSI機器のIDが一覧表示される。ホストアダプタは最後のID7に割り振られる。

 今回、相性問題が発生したこともあり、ただでさえ狭いテストベンチに2枚のマザーボードを置くという事態に陥ってしまった。おかげで、のたくるケーブルの嵐状態である。時々、どんな配線になっているのか、本人も考え込んでしまうことがあるくらいだ。なんだかすさまじいことになってしもうたなぁ。。。しかも実用性ゼロだし・・・

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狭いデストベンチ上に並んだ2枚のマザーボード。配線の嵐状態になってしまっている。どうしてこうなってしまったのだろう。。。我ながら呆れる。
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