フェルマーの最終定理
サイモン・シン著の数学ドキュメンタリーの名著「フェルマーの最終定理」


■フェルマーの最終定理 (2005/11/02)

 最近、すっかりこの手の数学関係書籍にハマっているのだが、これもまた名著と称されるだけのことはあり、とても面白い。題名は、もうこれ以上無いくらい「ベタ」だけど、数学界を約3世紀以上に渡って夢中にさせた超難問が解けるまでを、ドラマチックに描いている。フェルマーの最終定理は、本HPの「ネコまんが」の第一作「瞑想」でも取り上げたことがある。超難問という割には大変シンプルな定理で、下記のように表される。

2より大きい数nに対して、等式

 Xn + Yn = Zn

 を満たすX、Y、Zの値は存在しない

 こんなんが、なぜ3世紀以上にも渡って証明されなかったのか、ある意味不思議と言えば不思議なのだが、往々にして単純なモノほど奥が深いという、良い実例なのだろう。

 本書は、1993年6月23日、ケンブリッジにあるニュートン研究所でアンドリュー・ワイルズが、フェルマーの最終定理の証明を初めて行った講演会の場面から始まる。しかし!この時に行われた証明には、後に欠陥があることが判明し、最終的に完全な証明が発表されるのは1995年5月のことであった。ワイルズによるこの証明の顛末を主軸とし、証明のカギとなった過去の様々な定理を歴史的に解説した本書は、単なる数論解説書とは一線を画す。

 しかし、フェルマーって人は面白いねぇ。なんでも、人をおちょくるのが大好きな性格だったらしく、自分が創りだした定理を証明無しに他の数学者に送りつけ、証明できるものならやってみぃ!とからかうのを無上の喜びとしていたそうだ。こりゃ、はっきり言ってイヤな奴だ。嫌われ者といったとこッスか?そのフェルマーが、1637年頃に見いだした定理というのが、上記のものである。イヤな奴だけのことはあり、「証明したけど書くところがないから書かないよ〜ん」と、余白に書き残したというのだから、その嫌みっぷりは、なかなかどうして堂に入っている。

 で、結局この定理が証明されるまでには300年以上も必要だったのであるが、とにかくその方法は複雑を極め、果たしてフェルマー自身が同じ方法で本当に証明できていたのかどうか、今でも疑問が残っている。この定理を証明するに当たっては、過去の様々な定理・予想が使用された。これらの基礎を創った数学者のうち、ある者は20代で決闘により死亡し、ある者は謎の自殺を遂げるという、これまたシャレにならないくらい、屍累々の世界が展開されていたというのであるから、とんでもない話しではある。

 とまあ、そんなワケで、単なる数学解説書に止まらない本書は、ドキュメンタリーとして出色の出来といって良いだろう。2000年1月に初版が発行されてから、2005年で既に24刷まで重版していることからも、そのことは伺い知れる。なお、本書はBBCのドキュメンタリーをベースに書かれており、同ドキュメンタリーはNHKでも放映されたとのこと。新潮社刊。2,300円也。
ヽ(´ー`)ノ

<< Menu Page


Copyright (C) Studio Pooh & Catty
2001-2005