「暗殺のオペラ」VHSテープ ケース
DVD化はおろかLD化すらされていない、ベルトルッチ監督の傑作「暗殺のオペラ」。これはかつて東宝より発売されたVHSテープのパッケージ。映画は1970年の製作。東宝ビデオ・ゴールドラベル・シリーズとしてリリースされている。配給は、あのフランス映画社。バウ・シリーズ作品である。


■暗殺のオペラ (2005/09/23)

 久しぶりにVHSで「暗殺のオペラ」を観る。この映画は筆者の「Most favorite movie」であり、ベルトルッチ監督の傑作であり、同時に日本ではほとんど知られていない作品でもある。製作は1970年、実に今から35年前の作品だ。原作はホルヘ・ルイス・ボルヘスの<伝奇集>の中に納められた短編「裏切り者と英雄のテーマ」。5ページにも満たない短い原作を、当時30歳のベルトルッチが99分の映画に仕立て上げた。なぜこれが、LDやDVDにならないのか、前々から不思議に思っていたものだ。
ヽ(`Д´) ノ

 この映画の魅力は、何よりもまず映像の美しさにある。全編北イタリアの田舎町でロケされており、キリコの絵画に出てくるような場面ばかりだ。キリコの超現実的な画は大好きであるが、この映画を観ると、あの風景は別に特別なものでは無く、イタリアの古い街角では一般的に見受けられるものだということが良く判る。映像では、特に日没前後の数十分に撮影されたと言われている風景が美しい。当時の映画評では、「とろけるような甘いブルー」と評された。残念ながらVHSビデオテープでは、劇場で公開された時のような深い青は、完全に再現できてはいない。出演者として特筆すべきは、あの「第三の男」に出演した女優、アリダ・ヴァリ(Alida Valli)が出ているところ。1921年生まれであるから、撮影当時でも相当な年で、その貫禄は十分である!
(・∀・)

 この映画は、東京・千石にある「三百人劇場」で公開された。劇団「昴」の本拠地であるこの劇場は、1974年にオープン。当時まだ学生だった筆者は、開館間もないこの劇場で観た「暗殺のオペラ」を、まだ良く覚えている。その後、何回かリバイバル公開されたものの、ここ10年近くは一般に公開されていないハズだ。因みに、三百人劇場自体も、老朽化のため来年末には取り壊されるとのことである。何とも寂しい限りである。

_| ̄|○

「暗殺のオペラ」の1シーンより。
父の墓を暴く場面。光の使い方がスゴイ。

 さて、この暗殺のオペラには、筆者の愛車であるFIAT 500「チンクェチェント」が登場する。映画で使用されているのは、ドアが通称「自殺ドア」と呼ばれていた前開きのDタイプで、色は白。映画の中でも、イタリアの田舎町を元気に走り回っている。当時、この車がFIAT 500であるということは知らなかったが、非常にカワイイ車だったので印象に残っていた。思えば1999年にFIAT 500を購入したのも、この映画を観ていたからなのであろう。

 ところで、映画の中でFIAT 500の運転席がアップで写されている場面がある。フロントウィンドウを良く見ると、小さなステッカーが貼られているのが判る。これは、FIAT 500を新車で購入した際、ナラシ運転時のギアシフトを示しているものだ。新車購入後、最初の450マイルまでは、1速は10 m.p.h.まで、2速は16 m.p.h.まで、3速は25 m.p.h.まで、そして4速は38 m.p.h.までと指示されている。新車購入後の走行距離が450マイル〜900マイルの間は、1速=13 mp.ph.、2速=19 m.p.h.、3速=31 m.p.h.、4速=47 m.p.h.まで伸ばすことができる。筆者はこのシールをコレクションとして持っているが、それと同じものを映画の中でハケーンしたのは、今回が初めてであった。以上、重箱のスミ的考察でした・・・
ヽ(´ー`)ノ

 なお、原作であるホルヘ・ルイス・ボルヘスの<伝奇集>は、集英社刊「世界の文学」第19集に収録されている他、福武書店からも「ボルヘス 伝奇集」として発売されていた。福武書店の単行本は1990年の初版であるが、現在は残念ながら絶版。しかしアマゾンのマーケットプレイスにはたまに出てくることがあり、筆者もそこから購入している。「裏切り者と英雄のテーマ」を最初に読んだのは、大学の図書館であった。映画では、舞台をムッソリーニ独裁体制のイタリアに設定しているが、原作では1824年のアイルランドとなっている。主人公の名前も、映画ではアトス・マニャーニであるが、原作はファーガス・キルパトリックだ。微妙な相違はあるものの、ストーリーはほぼ忠実に再現されている。
(´ー`)у-〜

「暗殺のオペラ」に登場するFIAT 500 #1
ドアが前開きのDタイプが登場する。

「暗殺のオペラ」に登場するFIAT 500 #2
キリコの絵画に出てくるような、イタリアの田舎町を走り回るFIAT 500。音も当然、あのFIAT 500の音である。

フロンド・ウィンドウに貼られたシール
劇場で見た時には気が付かなかった、新車時ナラシ運転の際のギアシフトを示すシール(画面赤枠内)。っていうか、普通このシールの意味を気付く人は、まあいないだろうねぇ。。。筆者も、今回見て初めて判ったよ。

ナラシ運転時のギアシフト指示シール
FIAT 500を「新車」で購入すると、こういったシールが付いてきたようだ。フロント・ウィンドウに貼り付けて使用する。台紙に貼られた状態なので読みにくいが、ギアシフトの際の速度の目安が記載されている。

福武書店刊「ボルヘス 伝奇集」
「八岐の園」と「工匠集」の2部構成から成る「伝奇集」。「暗殺のオペラ」の原作となった「裏切り者と英雄のテーマ」は、「工匠集」に納められている。1990年初版発行。鼓直 翻訳。


<< Menu Page


Copyright (C) Studio Pooh & Catty
2001-2005