■パラドックス大全 (2005/07/31)
 アタマがワヤクチャになる本である。しかし、禿しく面白い。青土社発行の「パラドックス大全(世にも不思議な逆説パズル)」は、古今東西の逆説を例に取って、逆説が発生する仕掛けを解説する。認識論、哲学、論理学にかかわるハナシがメインとなるため、それ相応に理屈っぽい内容だが、一気に読ませてしまう面白さがある。2004年10月15日に初版が刊行され、2005年1月15日時点で第三版というのも頷ける。

 本書冒頭の「水槽の脳」の話しに始まり、一晩で全ての物が2倍の大きさになったことをどうやって認知するか?とか、記憶やそれまで全ての痕跡を含め世界が5分前に作られたとしたら、どうやってそれを知ることができるか?等、ユニークな思考実験が続々と紹介される。処刑日を告知されない「囚人のジレンマ」や、「アキレスと亀」といった有名なパラドクスも、もちろん解説されている。内容は専門用語も多数含まれているため、難しい部分も多い。本書中程に、コーヒーブレイク的な中仕切り「ジョン・H・ワトソン博士の謎」が掲載されているが、ここに紹介されているパズル(特に測量技師の悩みと題された問題)が傑作である!

 後半はNP完全問題、考え得る限り宇宙最大のコンピュータの発想、ヴォィニッチの手記の謎、ポーの暗号といった、認識論やコンピュータ科学にまで話題を広げて、解説している。著者は物理学と情報理論を専門とするMITのウィリアム・パウドストーン。翻訳は、この手の科学書では有名な松浦俊輔氏。夏休み等、まとまった時間に読むには最適な本だ。


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