■The Microwriter:Vintage ergonomic keyboard (2005/03/08)

 筆者はかつて、技術評論社の「モバイルプレス:2004年春号」連載記事にて、AgendAとマイクロライター・キーボードについて記述したことがある。AgendAとは、1989年にイギリスで発売されたPDAの元祖とも言うべきマシンで、Microwriter Keyboardと呼ばれるコード入力装置を備えていることが最大の特徴だ。これは、PDA上の5個のパッドに指を乗せ、複数のパッドを同時に押すことで、アルファベットを入力するという、大変ユニークなインターフェスであった。このようなキーボードは、コード・キーボード(Chord Keyboards)と呼ばれている。

 さて、このPDAに搭載されたMicrowriter Keyboardは、サイ・エンドフィールド(Cy Endfield)という人物が発明したものだ。その原点はと言うと、1980年に発売された「The Microwriter」という、エルゴノミック・キーボードにまで遡る。この超が10個以上付くくらいレアな製品は、筆者が当時記事を製作していた時は、まだ入手すらできていなかった。ところが!である。柴隠上人 稀瑠冥閭守 (Kerberos)氏がe-Bayをくまなく長期間に渡りサーベイしていたところ、ナント!25年前に発売されたこの激レアキーボードが出展されたのである。世の中、物持ちの良い人もいるモンだ!一撃必殺の勢いで無事落札。このほどロンドンから国際宅急便で運ばれてきた。

 無事届いたThe Microwriterは、本体の他にも専用のケース、取り扱い説明書まで付属したコレクターズアイテムである。この端末は、単体として動作させた場合には、片手で入力したテキストを、1行16キャラクタ表示のLCDに表示させる機能を有している。内部にはメモリも搭載されており、今となっては懐かしい以外の何者でも無い「カセットテープ・インターフェス」を介して、外部テープにデータを保存することも可能だ。またRS-232C I/Fを介してPCと接続すると、片手操作のキーボードとして使用することもでき、聞くところによれば、今でもWindowsのハイパー・ターミナル経由で、MicrowriterをWindowsパソコンの入力デバイスとして使用している廃人がいるそうである。

 このMicrowriterがユニークな点はそれだけでは無い。CPUにRCA社製の「あの」1802が用いられているのだ。1802とは、最初のRISCプロセッサと呼ばれていた製品であり、そのSilicon On Sapphire(SOS)プロセスで製造されたチップは、かの有名なボイジャーやパイオニア等の宇宙探査機用CPUとして用いられてきたという、曰く因縁のある石なのだ!!!

 The Microwriter本体は実にグラマラスだ。エルゴノミック・キーボードの元祖と呼ばれているだけのことはあり、曲線が美しい。にしても、実物を手に取ると、かなりでかい!さすがアングロサクソン向けに作られた製品だけのことはあるな。。。ボタンは親指部分に2個搭載されているため、全部で6個分ある。本体上面には、D-Sub 25PinのRS-232C I/Fコネクタと、リセット用スイッチ、それにカセットテープ用I/Fが並ぶ。本体下面には、わけのわからんでかいコネクタとACアダプタコネクタが並んでいる。

 それじゃあ、さっそく内部を見てみようか。をを!確かにRCA社製1802 CPUが載ってるよ!カンドーもんだね!内蔵RAMには、これまた懐かしい日立製のSRAM、HD6116が合計4個。これで8kバイト分だな。。。6116は、Z80マイコンを自作した時、筆者もお世話になったことがある。単体駆動させる場合には内蔵バッテリで動作するのだが、Ni-Cdバッテリは手のひらを置く部分の内部に、うまいこと隠されている。う〜ん、実に巧みなデザインだな。。。

 というわけで、今回は大変歴史的価値の高い珍品をご紹介。本来ならば本HPの「謎のパームトップ」に、体系的に整理して入れるべきなのだが、ページ完成がいつになるのかワカランので、取り急ぎここに掲載しておこう。おそらく日本には二台と無い物だと思っているけど、もし持ってる人がいたら、連絡キボンヌ!!!


The Microwriterセット一式
本体、専用ケース、取り扱い説明書、接続ケーブルと全て揃ったコレクターズアイテム。これだけのセットは、たとえe-Bayと言えども、そうそう出ないであろう!

The Microwriter本体
実際に手にすると、意外に大きくてビックリする。1980年製造ということもあり、本体はかなり黄ばんでいる。ボタンは全部で6個。この本体上部に、右手を覆うようにして置き、使用する。実にグラマラスなデザイン。

The Microwriter内部構造
CPU、SRAM、LCDモジュールで構成される本体内部。実におおらかな基板パターンだ。CPUはRCS社製1802を使用。SRAMには有名な日立製HD6116を4個使用。

RCS 1802 CPUのアップ
これが、最初のRISCチップとも言われているRCA社製1802 CPU。同チップのSOSプロセス版は、ボイジャー等の宇宙探査衛星に使用されたことでも有名である。


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