■ ポラロイド230ランドカメラ ■


ポラロイド230ランドカメラ外観

                                    
 ポラロイド(POLAROID)の語源について知っている方は少ないと思わ
れる。かくいう筆者も、恥ずかしながら今回WEBでポラロイド社のページをア
クセスして、初めて知った。ポラロイドとは、偏光板(ポラライザー)とセルロイ
ドという2つの言葉から造られた合成語だそうである。このフィルムを発明した
人はエドウィン・H・ランド博士という人。なんでも彼の特許の第一号なのだそ
うである。ポラロイド社の語源は、この低コストで実現できるシート状の偏向板
の名称を採用しているのだ。さて、1947年2月21日、ポラロイド社はイン
スタント写真システムのデモンストレーションを行なった。これが今日でも有名
となっているポラロイドカメラの元祖である。               

 ここに掲載したモデルは、おそらく1967年に発売されたと思われるポラロ
イド230ランドカメラである。古風な蛇腹式の折りたたみ式カメラであるが、
エレクトリック・アイを備えたオートマチックカメラのハシリでもあった。現在
発売されているこの種のカメラとは比較にならないほど操作方法は難しいが、そ
れでも当時としては現像に出すことなくその場で撮影した写真を見ることができ
る画期的な製品であった。                        

 このカメラは、持ち運びの際には、鏡胴を折りたたんでしまっておけるため、
非常に平べったくなってしまう。ファインダーも倒立式で、本体ケースの中に格
納される等、至る所にギミックが見受けられる。距離計は目測で、大体の露光も
手動で設定する必要がある。レンズは3枚構成で焦点距離は114mm/f  
8.8となっている。本体内部にエレクトリック・アイ用の電池を内蔵しており
露出設定は自動となっていた。本製品はモデル230だが、これに先立つモデル
100は1964年に日本でも発売された。モデル100から、トランジスター
による自動露光、電子シャッター機構が採用されている。なお、ポラロイド初の
カラーフィルム、ポラカラータイプ48が発売されたのは、1963年である。
ポラロイド230ランドカメラ正面

ポラロイド230ランドカメラ上面

ポラロイド230ランドカメラ側面

ポラロイド230ランドカメラ裏面
                                    
 本体は蛇腹が折りたたまれた状態で格納されている。ケースカバーを取り外し
て倒立式ファインダーを立て、蛇腹を引き出すことで、ようやくカメラらしい外
観となる。フィルムはパックとなっており、本体底面にあるレバーを操作して裏
蓋を開け、その中に挿入する。なお、フィルムを挿入するカバーの横には、電子
的に露出測定を行なうためのバッテリーフォルダーがある。         

 距離は目測で、本体右側にあるノブを左右に動かすことで調節する。このノブ
には、「一人の人物」「二人の人物」「人物と山」の3つの絵が描かれており、
距離調節の目安となっている。距離設定ノブを動かすと、倒立式ファインダーに
あるフォカース窓の像が左右に動き、ピントを合わせることができる。    

 このカメラが発売された当時は、3000スピードタイプの107白黒フィル
ムと、75スピードタイプの108カラーフィルムの2種類しか発売されていな
かった。しかし本体にはこの他にも150、300の設定も行なえるようになっ
ている。用いるフィルムのスピードにあわせて、レンズ下にあるフィルム・スピ
ード・ダイアルを手動で設定する。さらに、太陽光で撮影するか、フラッシュを
焚くかで、レンズ下にある露出標示切り替えノブを調整する。ここを設定すると
レンズ上部にある表示窓のインジケーターがメカニカルに切り替わる。なおかつ
レンズ周囲に設けられた明暗コントロールダイアルで、細かい露出設定を行なう
ことができる。ここまで設定する項目が多いと、本当にこのカメラは自動露出の
オートマチックなのかと疑いたくなるのだが、当時の自動露出とは、この程度の
ものだったのであろう。                         
距離調節ノブとシャッタースイッチ(赤いボタン)

露出標示切り替えノブとフィルムスピードダイアル

シンクロ接点部分

シャッターセットレバー

露出インジケータ部分
                                    
 撮影は、まずレンズ横についているシャッターセットレバーを下まで下ろす。
次に本体右側上部にある赤いシャッターレリーズボタンを押す。後はフィルムを
引っ張り出すだけだ。当時のフィルムでは、白黒写真の場合にはコーターと呼ば
れる薬品を写真面に塗布し、表面を保護する必要があった。また、カラー撮影の
場合、外気温が低温だと発色が良くないため、コールドクリップなるものを用い
て暖める必要があった。コールドクリップは金属製の板を2枚重ね合わせたもの
で、撮影したカラーフィルムをこの金属の間に入れ、ワイシャツのポケットなど
暖かいところに入れて現像させる。何とも原始的な方法であるが、妙に人間臭く
てなかなか良い。                            
倒立式ファインダーのアップ

蛇腹を折りたたんだ状態(正面)

蛇腹を折りたたんだ状態(側面)

折りたたんでケースカバーを付けた状態

ケースに格納した状態

フィルム挿入口を開けた状態

電子回路駆動用電池ケース

コールドクリップ(上)と取扱説明書



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