■ SONY MVC-C1(Mavica) ■


SONY MVC-C1(Mavica)の商品構成

SONY MVC-C1(Mavica) 外観

SONY MVC-C1(Mavica) 背面

SONY MVC-C1(Mavica) 上面

                                    
 今やデジカメはIT家電の主力商品となっているが、その昔、デジカメの前身で
ある「電子スチルビデオカメラ」が各社から発売された。昭和62年(1987年)か
ら63年(1988年)にかけて、ミノルタ、コニカ、ニコン、キャノン、ソニー等の
各メーカーが、映像をフロッピーに格納する電子スチルビデオカメラを開発・発
売した。しかし、どれも売れなかった。理由としては価格が高かったこと、画質
が今一歩だったこと、そして現在のようにパソコンが普及していなかった当時、
せっかくデジタルで撮影した画像を応用することが困難であったこと等があげら
れる。一言でいえば、その登場が早すぎたのであろう。その後、1995年にカシオ
がQV-10Aを発売し、デジカメブームが到来する。              

 ここに掲載した電子スチルビデオカメラは、SONYが昭和63年(1988年)に発売
したMVC-C1、Hi−Band Mavicaである。電子スチルビデオカメラは、このマビカ 
から始まった。SONYが試作機レベルで電子スチルビデオカメラを作成したのは、
昭和56年(1981年)のことだった。この時の製品には、CCD素子と磁気ディスク装
置を使用し、アナログビデオの技術をベースに電子スチルカメラを作成した。 

 試作機の技術を活かした市販型カメラは1988年に発売された。MVC-C1という型
番ではあるが、Hi-Band Mavicaという名称が付いている。市販タイプは撮像素子
にCCDでは無く20万画素のC-MOSセンサーを使用、記録媒体にはMavipakと呼ばれ 
るSONYオリジナルの2インチ・ビデオ・フロッピーディスクを使用した。    
SONY MVC-C1(Mavica) 正面

SONY MVC-C1(Mavica) レンズのアップ

Mavipakの挿入方法

SONY MVC-C1(Mavica) 電池室内部

                                    
 SONY MVC-C1(Mavica)は、カメラ本体とアクセサリーから構成される。これら 
は別売りであるが、基本的に両方揃えないと使い物にならない。アクセサリーは
ACアダプター(AC-T1)、バッテリーパック(BP-C1)及びプレイバックアダプタ
ー(MAP-T1)から構成されている。使い方は、カメラで撮影した画像を2インチ
のFDに格納し、カメラとプレイバックアダプターとを接続して、TV画面で撮影し
た画像を鑑賞するといった形になる。当時はPCが普及していなかった時代である
ため、TV画面を利用するしか方法は無かった。               

 本体は薄べったい形をしており、横に構えて撮影する。液晶モニターなどは付
いておらず、ファインダーをのぞいての撮影となる。レンズは15mm/F2.8の固定 
焦点。従ってフォーカス調整は無い。本体上面には、撮影枚数やバッテリーの状
況などをモニタする液晶表示画面と、単写か連写かを設定するダイアルが搭載さ
れる。連写は1秒間に4枚もしくは9枚の設定が可能であった。       

 ファインダー横には2インチのFDを挿入する口がある。本体右側のグリップ部
分は取り外せるようになっており、この内部にバッテリーパックが搭載される。
本体はグリップ部分が厚いため、座りが悪い。そこで、水平に置く場合には、ス
トラップに付いているリング状のスペーサーをはさむようになっている。こうい
ったところは、妙に人間臭くて面白い。以下に本体仕様を示す。       
形式 Hi-Bandフォーマット・スチルビデオカメラ
撮影枚数 50枚(2インチビデオフロッピーディスク使用)
レンズ 15mm、F2.8 固定焦点レンズ(1.5m〜∞)
撮像素子 2/3インチ MOSイメージセンサー(28万画素)
感度 フィルム換算で ISO 80相当
露光 プログラムによる自動露光(EV9〜17)
シャッター 電子シャッター(1/50〜1/500)
フラッシュ 自動発行(ガイドナンバー11)
電池 6V Ni-Cdバッテリーパック使用
寸法 144×56×106mm
重量 540g(電池を除く)

本体とプレイバックユニットを接続したところ

プレイバックユニットの外観

プレイバックユニットの充電機構

Mavipak(2インチFD)と3.5インチFDとの比較

                                    
 Mavica本体とプレイバックユニットとは専用のケーブルで接続する。プレイバ
ックユニットには各トラックを再生するための制御ボタンが付いている他、バッ
テリーパック充電のための機能も内蔵している。画像はTV上で鑑賞するため、プ
レイバックユニット裏面にはビデオ端子が設けられている。このプレイバックユ
ニット自体、カメラ本体のオプション製品であるが、このユニットに、さらにリ
モコンのオプションも付けることができた。もうこうなると、オプション地獄そ
のものだ。                               

 2インチのビデオフロッピーディスクは、筆者の記憶では確か同じSONYのパソ
コンにも使用されたような記憶がある。3.5インチと比較すると非常に小型だ。 
京セラのデジタルスチル版サムライにも、2インチFDが搭載されていた。記録フ
ォーマットは非常に単純で、同心円状に50本のトラックが設けられており、それ
ぞれのトラックに1フィールド分の画像データを格納する仕組みとなっている。

 今、この商品を見ていると、なんとか写真を電子化しようという涙ぐましいま
での努力が伝わってくる。結果的には、この時代に出現した電子スチルカメラは
完璧にハズしてしまったのであるが、この時の経験がデジカメの爆発的な普及の
基礎になったことは否めない。                      

※補記                                 
 SONY MVC-C1の操作マニュアルは、下記サイトからダウンロード可能です。  
 http://www.derrybryson.com/manuals/Sony/Mavica/MVC-C1.pdf       


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