県道39号線杉野沢付近から野尻湖を遠望する。

■長野秘湯旅行記第二日目 【其の二】 (1999/10/11)

●1999年10月11日(月曜日)
 長野から国道18号線を北上し、上信越道妙高高原I.C.付近で県道39号に入り、西に向かう。今回の旅行のメーンイベントは、長らく水害のため通行止めとなっていた「妙高小谷林道」を完全走破し、小谷温泉へ妙高側から入ることにある。この林道は、小谷温泉山田旅館を初めて訪れた1996年10月時点は通行止めとなっており、以降まだ一回も通ったことがなかった。同行した温泉マニアのO氏が得た情報によれば、この10月02日に、ようやく全面開通したとのことでさっそく行ってみることになったのだ。

 しかし、不安は残った。地図上でも判る通り、妙高小谷林道が途中で通行止めになっていた場合、今夜の宿泊先である小谷温泉へのアプローチは、ものすごい大回りになってしまう。この場合、一旦長野市まで戻り、国道405号線を使って白馬に出るコースしか残されていない。おそらく旅館到着時刻は、深夜近くになるだろう。走行開始直前のファミリーレストランで、Goサインを出すかどうか最後まで迷っていた。結局、天気も良いし開通したとの情報も確かなモノである可能性が高いことから、トライすることになった。


杉野沢近くの「五八木」バス停。

五八木

 県道39号に入って間もなくすると、杉野沢の集落を過ぎる。そこに「五八木」という大木があった。この「五八木」の名称は、その昔、高田藩の城主が5本の木を植えたので五八木と名づけられたそうだ。五八木バス停付近は見晴らしの良い高台になっており、遠くに野尻湖を遠望することができた。

 途中、妙高高原スキー場を通過したが、すすきが猛烈にきれいだった。県道39号線は、笹ヶ峰キャンプ場まで舗装道路になっていたが、その先からはハードなダートコースとなる。乙見湖は高原の開けた湖かと思いきや原生林に囲まれた神秘的な湖であった。

 この辺りの林を見ると、根元がS字型に曲がっているものが多い。冬期の積雪がすごいため、このように幹が曲がりくねってしまうようだ。ダートコースを山に向かって進むと、杉野沢橋に出る。林道は乙見湖を大きく迂回し、山側にあるこの杉野沢橋を渡って、西へと続く。


妙高小谷林道の地図。右側の乙見湖を通り、林道で乙見山峠を越え、小谷温泉へと向かう。全編ダートコース。季節により、良く通行止めになるので、通る前に確認することが必須。

妙高高原スキー場のすすき。

妙高高原スキー場のすすき。

笹ヶ峰キャンプ場からは、ダートコースになる。

乙見湖付近の原生林。

乙見湖にそそぐ真川(乙見湖方面)。

乙見湖にそそぐ真川(山側方面)。

杉野沢橋(標高1,263m)

積雪のため根元が曲がりくねった幹。

真川の向こうに笹ヶ峰を見る。

 湖畔の道路を走行中、なぜだかだんだん道路が細く未整備になってくる。どう考えても、ここ最近自動車が通過した形跡が無い道をそのまま進んで行くと、突然!盛り土がしてあり行き止まりになった。しかも、盛り土の向こう側には、そこそこ整備された砂利道が通っている。どうやら新道の開通に伴い、古い道路を封鎖したようなのだ。しょうがないため、新道への分岐点まで引き返し事無きを得たが、もしあそこで行き止まりのままだったとしたら、小谷温泉に到着するのはおそらく深夜になっていただろう。


林道がだんだん怪しい雰囲気になって行く。

ますます狭く、路面が荒れてきた林道。
いきなり盛り土で道路が寸断されていた!この時の絶望感と言ったら・・・
これこの通り。フルタイム4WDのオフロード車でも無い限り、この壁は登れない。仕方なしに分岐点までひき返す。

ここが、そもそもの間違いを起こしてしまった分岐点だった。左側の道に入ってしまったのが失敗。左は、工事車両用に新たに作られたもので、途中で行き止まりになっているのだ。右を選択すれば、ロスタイム無く進行できた。

 行き止まりを回避したものの、時間は既に午後4時を回っており、山深い林道は薄暗くなりつつある。待避所でしか行き違いができない林道で、しかもダートコースという悪条件もあり、なんとか日のあるうちに山田旅館に到着したいと焦ってくる。道は合っているのだが、乙見山峠に近ずくにつれて、ますます狭くダートになってくる。ようやく乙見山峠のトンネルを目撃した時は、さすがに安堵のため息が出た。ここに掲載した写真では、トンネルの出口が明るく光っている。これは、峠の向こう側の夕日が指し込んでいるためだ。

ようやくのことで辿り着いた乙見山峠の乙見隧道。トンネルの出口側に、峠の向こうの夕日が光る。

乙見隧道

乙見隧道を抜けた先の風景。今までうす暗い原生林の中を走ってきたが、いきなり光り輝く世界に連れ戻された気分になる。

乙見隧道の小谷側出口。

乙見山峠から小谷温泉へと続く林道。

 この乙見山峠であるが、コンクリートのトンネルが峠の両側を貫いている。さすがにここまでくる人は極めて少なく、周囲も深閑と静まり返っている。トンネルを抜けた先は眺望が開け、ちょうど夕日が沈むところであった。これには否応無しに感動した。しかもトンネル出口に立つと、峠の両側の気圧差から、妙高側から小谷方面へ向かって、かなり強い風が吹く。周囲は時々鳥の鳴き声が聞こえるだけで、絶対的静寂だ。これほど俗界と隔絶した場所も、そうそうあるまい。期待しただけのことはあった

 乙見山峠でもあまりゆっくりしていられない。小谷温泉まで、まだ10km程度のダートコースが残っている。というわけで、小谷温泉山田旅館に到着したのは、午後6時を少し過ぎた頃であった。


山肌を縫うようにして通る、乙見山峠から小谷温泉へと続く林道。

乙見山峠から小谷温泉へと続く林道。遠くに見える光が、本日の目的地である小谷温泉。

 山田旅館は、あいにく団体さんが宿泊しており、いつもの静かさは微塵も無かった。団体さんご一行が隣の部屋で酒盛りしていたと思ったら、午後9時になってピタッと静かになる。ヤレヤレと思ったのもつかのま、今度は朝の4時に起き出して、午前6時には団体さん全員が山の中へ消えていった。。。登山家の人は、朝が早いのである。




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