■ ディストリビュータ関連 ■

チンクのメンテで重要な部分の一つに、ディストリビュータ(以下デスビ)が
ある。デスビ関連の調整としては、ポイントギャップ調整と点火タイミング調
整が考えられる。いずれも点火系に影響を及ぼすため、調整が不良だと不完全
燃焼や起動不良等の現象が起こりやすい。以下、それぞれの簡易調整方法につ
いて解説する。                            

なお筆者のチンクでは、アイドル回転が不安定で時々不完全燃焼し、排ガスが
ガソリン臭いことがあるといった症状が発生していたが、原因を調査したとこ
ろ、ポイントギャップと点火時期の調整不良であった。ここを直したところ、
エンジンの回転が見違えるほど安定した。効果は高いと言えるであろう。  

ポイントのギャップ調整                       

デスビカバーを外すと、高電圧を各気筒のプラグに配分するローターが見える
ので、これも取り外す。ローターはほとんど痛むことは無いが、デスビカバー
の裏側にあるローターへの接点は結構重要な部分なので、荒れている場合には
磨いておいた方が良い。                        

ローターを外すと写真1のようなポイントが露出する。この写真で、Aと示さ
れた部分はシャフトで、一部が盛り上がった形となっている。Bと示された部
分がポイント接点で、Cがポイントギャップを調節するためのネジとなってい
る。                                 

先ず、ポイント面が荒れていないかどうかをチェックする。荒れている場合に
は、ヤスリで削って滑らかにする。この場合、そんなに神経質に磨くことは無
い。次にポイントギャップの調整を行う。タイミングベルトを手動で動かすと
中央の楕円形シャフトAが回転し、Bのポイントが開いたり閉じたりする。こ
のシャフトの山が来た時に、ポイントのギャップが 0.6mm 〜 0.9mm 程度にな
るように、Cのポイントギャップ調節ネジを調整すれば良い。この間隔は、卑
近な例で示すと名刺1枚分程度と思っておけば良いそうだ。        

ポイントのギャップ調整は重要で、ポイント面が荒れていたり、ギャップがく
っつきすぎていると、エンジンが始動しにくくなる。           

写真1:デスビの内部

点火タイミングの調整                        

ポイントギャップの調整が終わったら、次に点火タイミング調整を行う。点火
タイミングは、本来ならばタイミングライトを使用して調整するものであるが
ここでは緊急時に手動で調整する最も簡単方法について述べる。なお、デスビ
部分には高圧がかかるため、作業は必ずゴム手袋を装着して行うこと。でない
と感電する危険性がある。                       

デスビの下部、ちょっと見えにくいところに、タイミングアジャストナットが
隠れている。(写真2のAの部分)これは 10mm のナットになっている。スパ
ナ等を使用して、このナットの締め付けを緩め、デスビ全体が左右に動く状態
に設定する。                             

ここからの作業がちょっと怖い。エンジンを始動させアイドリング状態とした
まま、デスビ全体を左右に少しずらしてみるのである。左にずらすと点火時期
が早まり、右にずらすと点火時期が遅れる。エンジン音を聞きながら、最も安
定するところを見出し、そこでナットを固定する。この調整は、かなり慣れた
人でないと難しい。筆者も立ち会ったのであるが、微妙な変化は熟練者でなく
ては分かり難いと感じた。また、エンジンを動かした状態で調整するため、ち
ょっと怖いものがある。デスビを左右に振る場合は、デスビ本体を素手で掴む
ようなことは絶対に避けること。ゴム手袋を着用し、デスビ上部に柄の長い絶
縁ドライバーを挟んで、ドライバーの柄を持って動かせば安全である。   

この調整方法の他にも、イグニッションコイルからのコードにプラグを差して
エンジンをかけない状態でタイミングベルトを回し、火花が飛ぶところを探る
という調整方法もある。                        

写真2:デスビアジャストナットの位置(A)


デスビの側面にはコンデンサーが付いている。このコンデンサーがパンクする
とエンジンが非常に不調となり、とても走る状態ではなくなるそうだ。   
また、デスビの右側、ちょっと離れたところに位置する円筒形の部品が、イグ
ニッションコイルであるが、このコイルが劣化していると、やはりエンジンが
不調となる。良くエンジンが冷えた状態であればかかりは良いのだが、暖まっ
ていると始動が悪くなるという症状が見受けられるが、この原因としてイグニ
ッションコイルがパンク寸前であるということが考えられる。       

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